静岡スペースポートイベント参加報告

静岡スペースポートイベント「富士山静岡空港の将来を描く-スペースポート-」に参加してきましたので、概要をご報告します。内容及びディスカッションの発言者はメモと記憶を頼りに書いておりますので、間違いが有った場合はどうぞご容赦下さい。
日時:平成23年9月23日(金) 13:00~16:00
場所:島田市民総合施設 プラザおおるり
(1)13:00~13:50 基調講演 パトリック・コリンズ「民間宇宙旅行時代の到来と世界・日本の動き」
・飛行機はライト兄弟が発明して50年で一般人が乗れるようになった。宇宙は50年経っても簡単には行けない。飛行機とは大きな差がある。
・スペースシャトルが今年引退し、ISSに行く方法はソユーズしかない。⇒50年間で殆ど安くなっていないと言って良い。
・SpaceShipOneは約20億円で開発できた。これはNASAの半日分の予算と同じである。
・イギリスで提案されている水平離着陸のロケット・プレーン「アセンダー」は100億円あれば3年で開発できる。
・垂直離着陸ではRVTを発展させた宇宙丸構想がある。
・弾道飛行サービスは日本の赤字空港の再生に貢献できると考える。
・軌道飛行のエネルギーは弾道飛行の64倍になるので、技術的難易度は格段に高い。
・宇宙での大規模構造物としての需要は宇宙ホテルと太陽発電衛星のみ。
・2035年を目標に1GWの太陽発電衛星を開発する構想がある。
・宇宙旅行産業が発展し成功すれば経済的波及効果が大きいと考えられるが、日本での宇宙旅行産業への投資は遅すぎ、このままでは乗り遅れてしまう。
・今のところ宇宙では資源競争にまでは至っていないが、資源競争が始まれば宇宙産業が飛躍的に発展するであろう。
(2)14:00~16:00 パネルディスカッション
「宇宙旅行の可能性と富士山静岡空港のスペースポートとしての魅力」
コーディネーター:高野忠氏(日本宇宙旅行協会)
パネラー:
富野 由悠季氏(アニメーション監督(機動戦士ガンダム 他)
稲谷 芳文氏(JAXA教授)
秋山 雅弘氏(株式会社アルモニコス代表取締役、SAT代表幹事)
パトリック・コリンズ氏(SSTJ、麻布大学教授、JAXA共同研究員)
【高野氏】
・日本でのスペースポート候補として、静岡空港と茨城空港を挙げたい。
・ISASで2004年に宇宙ミッション研究会を立ち上た際、主要なミッションの一つとして宇宙旅行が挙げられたのがきっかけで注目するようになった。
・ISS滞在旅行は10人程度待っている状態。
・スペースポートへのアクセスは重要。静岡空港の場合、新幹線が地下を通過しているので、駅を建設する必要がある。
・スペースポートになれば、アクセスのための国内外フライト便増が期待できる。
【富野氏】
・宇宙旅行に憧れていた子供だった。
・1951年(小学4年生の時)に公開された月世界征服が宇宙旅行を意識した最初。エンジンは原子力ロケットだった。
・同時期にフォンブラウンのドーナツ型宇宙ステーションが発表された。
・30~40代の人達はガンダムに影響されて宇宙業界に入った人が多い。
・現在の日本宇宙旅行協会とは一切関係ないが、この頃にも日本宇宙旅行協会が存在していて、火星の土地を1万坪1000円で売っていた。
・1956年1月1日の読売新聞に「宇宙のコロンブス」と言う連載記事がスタートし、宇宙SFアニメを描くヒントをたくさん得た。特に印象深かったのは、宇宙で使用するものは形がブサイクで構わないことが分かったこと。
・現在のISSは形が気持ち悪い。是非、ドーナツ型の宇宙ステーションに向かう道筋を作って欲しい。
【コリンズ氏】
・ガンダムがきっかけで、日本で宇宙旅行の研究をすることになった。その富野さんの話が聞けて、議論できるのは大変光栄に感じている。
【稲谷氏】
・宇宙旅行に税金は使われないであろう。
・現在、NASAは漂流しているようである。低軌道以下は民間がNASAに変わって開発を進めている。
・宇宙旅行の実現は技術的には全く問題はない。やる気と資金の問題。既存のしがらみを突き抜けるような人達(ゲームチェンジャー)が必要。
【秋山氏】
・宇宙航空技術利活用研究会(SAT研:Space Airplane Technology)は2005年2月8日に設立し、現在53社が加入している。
【ディスカッション】
・ガンダムでは普通に宇宙旅行をしている。宇宙移民を考えると宇宙エレベーターに行き着く。(富野氏)
・ロケットが無いと宇宙エレベーターの一つも作れない。どちらかが不要と言うものではない。(富野氏)
・宇宙エレベーターは柔構造であるべきと考え、ガンダムに登場させるべく構想を練っている。(富野氏)
・スペースシャトルは週1回、コスト1/10の触れ込みだったが、現実は見ての通り。次世代宇宙船も開発できていない状況。(稲谷氏)
・カーボンナノチューブで作ればロケットが1/600の重量になる。1/100の重量になれば、車で宇宙に行くことも可能。(稲谷氏)
・政治家と経済人を宇宙旅行させて、1週間閉じ込める(帰らせない)。そうすれば、地球全体のことを考えて行動してくれるようになるであろう。(富野氏)
・国民が買いたいようなものを提供することが重要。バートルータンが400ドルで宇宙に行けるようになると言っていた。(コリンズ氏)
・静岡空港は本州の真ん中にあり、ロケット打上げでは有利な東端にあり、富士山の強烈なイメージがあるので、スペースポート候補になり得ると考える。(富野氏)
・弾道飛行は名前が良くない。宇宙旅行を広げるにはネーミングを考えた方が良い。(稲谷氏)
(報告者:広崎朋史)

WLSJファンミーティングvol.3参加報告

9/10(日)に東京カルチャーカルチャーで開催されたWLSJファンミーティングvol.3に参加しましたので、ご報告します。
WLSとは、月面をゴールとした世界最大の賞金レースGoogle Lunar X prizeに参加しているチーム、White Label Spaceの略称です。 そして、WLSJapanは、WLSの日本チームのことを指します。
 今回のファンミーティングは、WLSが現在作成している月面車、ローバーのプロトタイプが完成したことに伴い、催されたイベントです。 その為、本イベントのメインはローバーの紹介でした。
 まず、本イベントで紹介されたローバーについて紹介します。
 WLSのローバープロトタイプは、東北大学の吉田教授を中心とする東北大学宇宙ロボット研究室で作成されました。その概要は大きさ55×46×49cm3、重さ8kg(構成物質由来で実車より2kgほど軽量)で、分速10mで走行します。 そして、月のレゴリスでも走行を容易にする為、大直径20cmの車輪を装備し、打ち上げ機への搭載を容易にする為に、折込式の車輪が採用されています。 また、個人的に興味を惹かれたものとしては、追加装備の360°カメラと3次元マッピングを作成する為のレーザーレンジセンサです。プロトタイプには360°カメラの搭載のみが施されていました。 これらの追加装備は、ローバー以外への使い道も考えられ、今後の発展が楽しみです。
次に、本イベントの大まかな流れを報告します。
1. WLSJ代表 袴田氏のプレゼン
 →前回のファンミーティングとは違ったプレゼン内容で、Google Lunar X prizeが催されるまでの経緯が中心でした。
2. WLSJ経営戦略担当 中村氏のプレゼン
 →こちらもニューデザインのプレゼンでした。 新たに追加された情報としては、10月11日に開催されるエンジニアイベントをはじめとする様々なイベントが新たに考案されいるということです。 是非皆さんも参加してみてはどうでしょうか。
3. 東北大学宇宙ロボット研究室 吉田教授の経歴とローバー紹介
4. プロトタイプローバー操縦権剥奪クイズ大会
 今回のファンミーティングは、記者会見後1回目であった為、個人的に大人数の参加を想像していました。 しかし、実際の参加人数は約30人ほどで、以前に参加したファンミーティングとさほど変わらない人数でした。 このことから、記者会見の反響は余りなかったかのように思えたのですが、イベントの途中で、ニコニコ生動画を見ている人が2万人程度もいることを聞いて、多くの人に注目される活動になっていることを実感しました。
(報告者:扇拓矢)

静岡スペースポートイベントのご案内

9/23(金)に静岡県とNPO法人日本宇宙旅行協会(SSTJ)共催により、「富士山静岡空港の将来を描くスペースポート」をテーマに、静岡スペースポートイベントが開催されます。ガンダムの富野監督とJAXA稲谷教授等もゲストで登場しますので皆様ご参加されてはいかがでしょうか?
◆講演会及びパネルディスカッション (島田市民総合施設プラザおおるり)
   ★講演 パトリック・コリンズ氏 テーマ 「民間宇宙旅行時代の到来と世界・日本の動き」
   ★パネリスト
     ・富野 由悠季氏 (アニメーション監督(機動戦士ガンダム 他)
     ・稲谷 芳文氏 (JAXA教授)
     ・高野 忠氏 (日本大学教授、JAXA名誉教授)
     ・パトリック・コリンズ氏 (SSTJ、麻布大学教授、JAXA共同研究員)
     ・秋山 雅弘氏 (株式会社アルモニコス代表取締役、SAT代表幹事)
◆富士山静岡空港にてイメージボードの展示
    静岡スペースポート化のコンセプトとその背景についてのイメージ展示