2016生態工学会年次大会 参加報告

6月24日、25日に宮崎で開催された生態工学会年次大会、及び「生態工学会 若手の会」のSICLE勉強会に参加致しましたので、特に印象に残ったものとして以下の内容を挙げます。

参加日時: 2016年6月24日(土)
場所: 宮崎グリーンスフィア壱番舘
主催: 生態工学会

■宇宙居住のための空気再生に関する研究(JAXA 桜井誠人)
 ISSの次のステップとして月近傍ミッションを目指しているという事で、NRO(Near Rectilinear Orbit)の紹介がありました。NROは地球と月を周回する軌道の事で、地球からほとんど可視になるそうです。
 発表内容は生命維持システム(CO2除去装置、O2製造装置等)の開発状況と将来展望で、2つ質問が出ました。1つは植物をECLSSに取り込まないのかという質問で、現状ISSでも一人分くらいの酸素は植物から供給したいとの事でしたが収支の計算が難しい為、中々実現していないとの事です。植物から酸素を確保する目処が立てば、積極的に生命維持システムに取り込みたいという事でSICLEの出番かもしれません。2つ目の質問はサバティエ反応で生じるメタンを活用できないかという事でしたが、桜井さんの回答は圧縮すれば燃料くらいには使えるかもという事でした。

■宮崎の日照を生かした太陽エネルギー利活用技術(宮崎大学 西岡賢祐)
 宮崎県は年間日照時間と年間降雨量が共に全国トップクラスの県で、太陽光発電には優れている場所です。日照時間が多いというのは直観的ですが、降雨量も重要になってくるのは太陽電池の表面についた汚れを自然に洗い流してくれるからです。
 西岡先生の研究内容はいかに効率よく発電するかで、以下の取組により世界トップレベルの変換効率で水素の製造に成功したそうです。

・太陽光追尾
・集光型太陽光発電
・反射防止兼防汚コーティング

 太陽光追尾は文字通り、太陽を追尾するシステムです。通常の固定式だと朝夕は太陽光の角度が浅いため発電効率が落ちますが、太陽追尾システムは太陽を追尾するため極端な発電効率の低下を防げます。
 集光型太陽光発電はレンズで光を集光する事により、太陽電池の使用面積を減らし、高価な高性能太陽電池で発電するというものです。

 反射防止兼防汚コーティングは、超親水性のシリカベースの塗布剤を太陽電光の表面に塗布する事で発電効率低下の原因のひとつである、光の反射と汚れを防止するそうです。太陽電池表面の塗布は実際大変だったみたいですが、現在は掃除ロボットのルンバ的なもので塗布しているとの事でした。

■生態工学会 若手の会のSICLE勉強会
SICLEを説明する立場として、SICLEのデモを行いました。
興味を持ってくれた学生さんはいましたが、来年就職するという事で深く関わる事は出来なさそうです。引き続き、若手の会のリーダーの木村さんを中心にSICLEを使って頂き、意見交換できたらと思います。

三重大の加藤先生から、SICLEのExecuterである「Conversion」について、人間の「消化」処理のインプットが「food」と表現されており、食物の平均値をとっているのは分かるが、食材の偏りによって、消化スピードに変化が出てくると思うので、その揺らぎを表現できれば面白いかもとご意見を頂きました。

以上。
報告:大浦