「恐るべき旅路」を読んで

_ 本書は、火星探査機「のぞみ」のたどった12年間における科学者、技術者の苦闘を見事に綴っています。日本惑星協会TPS/JメルのYMコラムで多少の事情は知っていたのですが、これほどのドラマがあったとは知りませんでした。個人的には、大学で惑星探査機の軌道設計を勉強したことが有るので、燃料節約のための川口先生のスウィングバイ軌道の設計には驚嘆させられました。日本発の惑星探査機は火星周回軌道には乗りませんでしたが、幾多のトラブルを乗り越えて、火星近傍まで行った技術の経験は大きな財産となり、次なる惑星探査機の開発に生かされることでしょう。アポロ13のようにハッピーエンドにはなっていませんが、お勧めの一冊です。

湘南事業家フォーラム

_ 湘南事業家フォーラムに入会させて頂きました。このフォーラムの中には宇宙部会があり、湘南フォーラム衛星として民間安全監視衛星、アマチュア天文衛星、産業用回収衛星開発構想と、防災・気象情報の配信、天体観測情報の配信、宇宙環境による医薬品・新素材製造に向けた衛星運用・地上システム開発の構想が練られています。面白い分野では、科学教育用衛星設計図書発行や科学教育用宇宙模型・玩具開発構想というのも有ります。当社としては、これまでに培ってきた地上システム開発ノウハウやIT技術を駆使して、主に衛星運用・地上システム開発の分野で積極的に事業化に参画して行きたいと考えています。

ミッション運用管理設備

_ 私は前の職場で地球観測衛星用ミッション運用管理設備の開発に長い間携わって来ました。この設備は地上設備では有るのですが、地球観測衛星のミッション機器(センサ、データレコーダ、送信機)に関する知識を必要とし、それらの運用計画を立案して、追跡管制システムに提出する役目を負っています。ミッション機器の運用計画を立案するためには、バス機器の制約条件を考慮しなければならないため、衛星全体の知識をも必要とする設備です。非常に面白い反面、追跡管制担当や衛星担当の方々との調整が非常に大変では有りました。しかしながら、この経験が自分自身のスキルアップと人脈作りに大きく貢献したと感じています。

更に言いますと、対象が地球観測衛星で有ったという点で、個人的にも地球環境問題に興味が有ったことから、非常に良い経験で有ったと感じています。これらの関連分野には引き続き携わって行きたいと考えています。

2005生態工学会年次大会参加報告

_ 2005生態工学会年次大会に参加して来ました。1日目は当社が関連している発表が3件有りました。当社は事務局の横にブースを開いており、そこにも居なければならなかったので、全ての発表は聞けなかったのですが、日本科学未来館の方から「社会が求めるミニ地球研究」と題する発表が有り、環境科学技術研究所の閉鎖型生態系実験施設が「環境(農業)」と「宇宙」を結ぶ存在であるとの意見が述べられていました。当社も宇宙と環境を2大テーマに掲げておりますので、非常に興味深い発表でした。2日目では、同施設の閉鎖居住実験の準備状況の発表が9件行われましたが、今回は「生命維持技術を取り巻くJAXA長期ビジョン」と題するセッションで5件の発表が有り、JEM以降の生命維持技術について活発な討論が交わされました。日本が誇れる生命維持技術として、どこをターゲットに研究開発を進めれば良いのか、現状の予算状況の中でそれを行っていくのは非常に厳しいことだと思われますが、是非頑張って推進して頂きたいと強く感じました。当社も閉鎖型生態系実験施設用挙動予測システム開発の一翼を担っており、積極的に貢献して行きたいと考えております。

GOSATシンポジウム

_ GOSATシンポジウムに参加して来ました。GOSATとはGreenhouse gasses Observing SATelliteの略で、温室効果ガス観測技術衛星のことです。地球環境問題の一つとして地球温暖化が叫ばれていますが、その原因は二酸化炭素(CO2)に代表される温暖化ガスの急激な増加にあります。日本でも最近異常気象が頻発するようになってきています。これも地球温暖化が原因の一つとの見方が有力です。昨年開催された第48回宇宙科学技術連合講演会で福井に行ったのですが、丁度福井集中豪雨の直後で、観光で朝倉氏館跡まで足を伸ばした際に、遺跡の一部が流されてしまった跡を目の当たりにしました。京都議定書をアメリカは批准しませんでしたが、アメリカもOCO(Orbiting Carbon Observatory)という衛星を打ち上げるとのことです。これらの衛星が、地球温暖化の進行状況を人類に明らかにし、温暖化ガス削減に向けた活動が活発になることを祈りたいと思います。当社としても、宇宙開発と地球環境問題の両方に深く関与するGOSAT開発に何らかの形で参画してみたいと考えております。